アキオ シロートマグル

記事一覧(17)

眠れないあなたのために、夜と闇にいざなう音楽

 夜は人を浮き彫りにする、僕はそう思う。 台湾でネオンと人々の喧騒、蒸し暑い淀んだ空気と匂いに包まれると、賑やかだからこそふと余計なことを考えてしまう。    顔を見ることなく亡くなった台湾の祖父のこと。    彼女の心を穿つ彼女自身の過去のこと。今までの音楽とともに歩いてきた自分。    そして、死に向かって歩いて行くこれからの自分。 どうしても、夜はそういうことばかり頭に浮かぶ。いくら傍に誰かがいようと、どうしても夜や死や闇、そういった世界からは離れられない性分なのだと思う。 まあ、そこまで暗くならなくても夜はどうしても思考の波で重く沈んでいく人も多い。紛れもなく僕もその中の1人だ。「同じような思いを抱える人達の心に少しでも寄り添える、そして自分の心を慰撫できる音楽とはなんだろう?」    そんな思いつきで書いたので夜と関係ない様な曲もある文章だが、しばし付き合ってくれると幸いである。    ヴィジュアル系バンドの紹介になったのは目をつぶって・・・1.Merry Go Round「桜の満開の木の下で」 最も好きなヴィジュアル系ロックバンドの1つ、Merry Go Round。 彼らはヴィジュアル系バンドの中でも更に暗く猟奇的な歌詞とサウンドを特徴とする「名古屋系」と呼ばれるバンドの代表格である。ゴシックで実験的なサウンドは後続のバンドに大きな影響を与えた。「1987年1月6日の夜に そう君を埋めたんだ空が泣いて月が死んでる 悲しい静かな夜にそう埋めたんだ」この始まりだけで感じさせる不穏さと暗さで沈んだ心を更に沈めていく曲。

台湾とちょこっとだけ比較した、東京の存在

はじめに 突然だが、これを書いている8月21日深夜現在、僕は彼女と台湾にいる。8月20日から9月5日というまあまあな期間でノープランの旅行だ。ちなみにふたりとも中国語は少ししか話せない。 生まれも育ちも東京だが、母が台湾人という自分の家庭環境上、台湾の話もよく聞いたりもしくは行ったりもするが、実家絡みの訳あり旅ではなく、単純に旅行として台湾に行くのはコレがはじめてだったりする。感慨深いゾ! 実は半年くらい前にも祖父祖母および肉親の墓参りも兼ねて台湾に来たのだが、都市部も郊外も眺めていて「活気があるな」とつくづく感じている。街は物理的にも明るいし、音楽や車の行き交う音、雑踏など様々な音が所狭しとひしめいていて昼夜問わず非常に賑やかだ。 比べて東京はどうだろうかと考えると・・・。 これからアレコレ書くが、東京というテーマだからこそ生まれる音楽もあるのではないかと、急に思い至ったので、善は急げ、行動は言葉より雄弁だ、と言わんばかりに思い付きのまま旅の記録代わりに書き記すことにする。東京と台湾の都市の違い 音楽の話をする前に、東京と台湾の違いを個人的な感想であるが見ておくことにしよう。    こちらは台湾の台北、正確には「古亭」という台北にほど近い街の様子だ。

超絶不器用なバンドの象徴的作品~LUNA SEA「STYLE」(1996)

 はじめに 中学2年で「ROSIER」を聞いて衝撃を受け、LUNA SEAに人生観、死生観、生き方、あらゆる面で骨格を形作られた僕。 そんな僕がLUNA SEAについて書くならどの作品になるんだろうか?どういう風に書けば良いのだろうか?と考えた。 そして、どのアルバムのレビューを書くか、持っている限りのアルバム、ライブ映像を見ていくに連れて、なにを書こうか迷った。正確にはアルバム「MOTHER」「STYLE」どちらを書くべきなのか。 LUNA SEAは4枚目のオリジナルアルバム「MOTHER」(1994)でヴィジュアル系の雛形となる神秘的な世界観を押し出し、後続に続くヴィジュアル系というものを完成させた。 クリーンと歪みの画期的なツインギターを発明し、激しさや疾走感を感じさせるのはリズム隊が担当。ギターはひたすらに音響を構築していくことに徹し、自分たちの色を出しつつインダストリアルやプログレなど趣向の違うナンバーを巧みに表現している。そしてリードギターは分散和音とコードと単音のロングトーンを弾くサイドギターは分散和音とコードのみ弾く単音リフ、単音カッティングはベースが担うという「他人とかぶらないこと」を徹底した独特のバンドアンサンブルは、当時海外でもまだ成し得てなかったことだと思っている。 V系にもV系以外にも大きな影響を与え、彼らを目指しバンドを始める人間が多数生まれた。日本ロック史に語り継ぐべき作品。それが「MOTHER」という作品だ。僕は自分の内から湧き上がるそういった感情を採用しなかった。確かに「MOTHER」は素晴らしい、何の文句もない。 ただ、それはLUNA SEAそのものではないのではないか。LUNA SEAというバンドに最も象徴される、ロックという世界の修験者のような生き方の部分はそこには現れていないと感じた。 だからこそこれを書くのだ。 LUNA SEAの何が好きなのかではなく、LUNA SEAとは何なのか?を記すために。STYLE(1996)