眠れないあなたのために、夜と闇にいざなう音楽
夜は人を浮き彫りにする、僕はそう思う。
台湾でネオンと人々の喧騒、蒸し暑い淀んだ空気と匂いに包まれると、賑やかだからこそふと余計なことを考えてしまう。
顔を見ることなく亡くなった台湾の祖父のこと。
彼女の心を穿つ彼女自身の過去のこと。今までの音楽とともに歩いてきた自分。
そして、死に向かって歩いて行くこれからの自分。
どうしても、夜はそういうことばかり頭に浮かぶ。いくら傍に誰かがいようと、どうしても夜や死や闇、そういった世界からは離れられない性分なのだと思う。
まあ、そこまで暗くならなくても夜はどうしても思考の波で重く沈んでいく人も多い。紛れもなく僕もその中の1人だ。
「同じような思いを抱える人達の心に少しでも寄り添える、そして自分の心を慰撫できる音楽とはなんだろう?」
そんな思いつきで書いたので夜と関係ない様な曲もある文章だが、しばし付き合ってくれると幸いである。
ヴィジュアル系バンドの紹介になったのは目をつぶって・・・
1.Merry Go Round「桜の満開の木の下で」
最も好きなヴィジュアル系ロックバンドの1つ、Merry Go Round。
彼らはヴィジュアル系バンドの中でも更に暗く猟奇的な歌詞とサウンドを特徴とする「名古屋系」と呼ばれるバンドの代表格である。ゴシックで実験的なサウンドは後続のバンドに大きな影響を与えた。
「1987年1月6日の夜に そう君を埋めたんだ
空が泣いて月が死んでる 悲しい静かな夜にそう埋めたんだ」
この始まりだけで感じさせる不穏さと暗さで沈んだ心を更に沈めていく曲。
2.Zi:Kill「Lonely」
X JAPANが中心になりLUNA SEAやGLAYが名を連ねたインディーズレーベル「Extasy Records(エクスタシーレコード)」。
その中でも代表格であり、またヴィジュアル系初期代表格のバンドとして名高いZi:Kill(ジキル)。
ニューウェーブとポジパンとメタルを組み合わせつつもそのどこにも収まらない独特の音楽性は今聞いても非常に個性的である。
TUSK(タスク)の歌い分けとKENのギターフレーズはとにかくぶっ飛んでいて今聞いても新しさを覚える。そしてこの曲の時のドラムは現L'Arc~en~Cielのyukihiro。手数の多さと極力まで低音域を感じさせないドラミングがジャンルレスな要素に拍車をかけていた。
「すぐそばにある物さえ 見失うこともある
足をすくわれて ゆらゆらと過ぎていく
きっと誰かに会えると信じていた」
コレほど悲しさを感じさせるメジャーデビューソングを僕は知らない。
3.L'Arc~en~Ciel「花葬」
名前は説明の必要が要らないバンドだが音楽性はあまり知られていない。
一言で言うと「ヘヴィメタル+ニューウェーブ」なのだが、そのどちらも明確に感じさせることのない楽曲が多い。
hydeの幻想的な歌詞、kenの加飾要素の多い少しスケールアウトした速弾きが特徴なギター、tetsuyaのメロディラインのようなベース、yukihiroの手数の多い機械的なドラミング、など個性の異なる4人から生まれる曲は常に面白い作品に仕上がる。その鮮やかな手腕と楽曲はスピッツや電気グルーヴ、亀田誠治など同業者からも高く評価されている。
今作はそんな中でも退廃的で死を感じさせる歌詞が特徴的で、僕がはじめてそういった価値観や美に触れるきっかけになった楽曲である。
「瞳あけたまま 腐食してゆく身体 あざやかに失われる この意識だけを残して 春を待てずに 」
中学2年で聞くにはあまりに衝撃的なフレーズでした・・・
4.LUNA SEA「LOVELESS」
僕が最も好きなバンドの1つ(矛盾してる)、LUNA SEA。
彼らの魅力は何と言っても個性の異なるメンバーのぶつかり合いから生まれるハイクオリティかつジャンルレスな楽曲の数々である。特に1994年に発表されたこの曲は本当に凄かった。
クリーントーンとサスティーンの組み合わせ、リズム隊と一体になって生まれるグルーヴ。ここまで完璧な曲は94年の海外のロックにすらなかったと初聴から10年たった今でも強く思っている。
4つ打ちもそうだが、2本のギターとベースのアンサンブルが斬新で、実験的な音楽性が評価されているRadioheadですらここまでのものはまだ作れてないにもかかわらず、25歳そこそこで作ったと思うと・・・。
「Loveless lovemaking
秒読みの中 loveless lovemaking 大切なものを loveless lovemaking
秒読みの中 loveless lovemakingキミよ離さないで…」
このサビと楽器隊の一体感凄いのよね、夜というより夜明けを感じさせる神秘的な曲。
この映像のライブ、人生初ライブなのですがコレを超えるものはおそらく一生見ることはないだろう(D'ERLANGERのは結局当たらなかったので音漏れをな・・・)。
5.BUCK-TICK「JUPITER」
最も好きなバンドはもうひとつある、BUCK-TICKだ。
このバンドの魅力は多彩な音楽性もあるのだが、もうひとつ、フロントマンの櫻井敦司が書く深みのある死への視点がある。彼の書く歌詞にはどれもこれも愛と死への眼差しが貫かれており、それはバラードでこそ真価を発揮すると個人的には思っている。
そんな彼の表現した「愛と死」の中でもこの曲は美しさと表現力が抜きん出ていると感じるし、彼らの放つ存在感と合わさると他のどのバンドにも真似出来ない圧倒的なものになる。
「歩き出す月の螺旋を 流星だけが空に舞っている
そこからは小さく見えたあなただけが
優しく手を振る」
この歌詞は、今まで自分が出逢ってきた「死」について様々なことを考えさせる。
哀しくも、どこか優しい。
6.Plastic Tree「くちづけ」
V系にはめずらしく、グランジやシューゲイザーというルーツとThe CureのようなUKゴシックバンドをルーツとして鳴らすバンドPlastic Tree。
彼らの曲には常にどこか切なさと悲しさのこもった曲が多いのだが、今作はそんな彼らの作風に沿った曲になっている。文学的な匂いと切なさはヴィジュアル系というより今のロキノン系などに近いものがある。というか個人的にはその手のロックにある、悪い意味ではないナヨナヨした感じと文学系ロックの走りだと思っている。
「雨音を聞いていた 鍵盤を叩くような
気づいたら記憶まで滲みだした そんな夜
呼吸する心臓が ざざ鳴りに重なれば
ふたりしかいない国 傘の中でたどり着いてた」
ヴィジュアル系的な歌詞とは一味違う、しかし他のバンドとも違う彼らにしか書けない世界を感じて欲しい。
どうしてもネガティブになるときは明るい曲はむしろ鋭い刃になる。だからこそ、その気持ちを大切にできる曲をいくつか選んだ。
どんな感情も君だけのものである、他の誰でもない。それは紛れもない事実なのだから。
振り返ったときに良き思い出になりますように。
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