台湾とちょこっとだけ比較した、東京の存在


はじめに

 突然だが、これを書いている8月21日深夜現在、僕は彼女と台湾にいる。8月20日から9月5日というまあまあな期間でノープランの旅行だ。ちなみにふたりとも中国語は少ししか話せない。

 生まれも育ちも東京だが、母が台湾人という自分の家庭環境上、台湾の話もよく聞いたりもしくは行ったりもするが、実家絡みの訳あり旅ではなく、単純に旅行として台湾に行くのはコレがはじめてだったりする。感慨深いゾ!

 実は半年くらい前にも祖父祖母および肉親の墓参りも兼ねて台湾に来たのだが、都市部も郊外も眺めていて「活気があるな」とつくづく感じている。街は物理的にも明るいし、音楽や車の行き交う音、雑踏など様々な音が所狭しとひしめいていて昼夜問わず非常に賑やかだ。

 比べて東京はどうだろうかと考えると・・・。

 これからアレコレ書くが、東京というテーマだからこそ生まれる音楽もあるのではないかと、急に思い至ったので、善は急げ、行動は言葉より雄弁だ、と言わんばかりに思い付きのまま旅の記録代わりに書き記すことにする。



東京と台湾の都市の違い

 音楽の話をする前に、東京と台湾の違いを個人的な感想であるが見ておくことにしよう。

    こちらは台湾の台北、正確には「古亭」という台北にほど近い街の様子だ。

 雑多なビル群とどこかしこに見える生活感と綺麗じゃない感じは実にアジアらしい。飯は美味しい!

 こちらは東京、銀座。整然とビルが林立するさまと規格化された街並みが東京らしい。空が狭く感じることもそうだが、無機質な街並みとも取れる清潔さはある意味では東京の個性なのだと思う。

 

 

 この二枚からの単純な比較は難しいのだが、台湾の台北の基本的な街並みは日本より雑然としていると思っていい。空気は東京のほうがきれいだし、汚いと行ってしまえば汚いし臭いもする。

 しかし、僕はそこに街が人の集合体であるという当たり前の認識を見せられた気がするのだ。ひしめき合う音と人、歩道に容赦なく立ち並ぶ露天とガンガン割り込んでくる車。暮らす環境的には東京のほうがいいのかもしれない。

 それでもなお、歩いていて・・・明らかに東京よりも活気があり、人々の明るさや「人同士は迷惑をかけて当たり前」という現代の日本ではなかなか見られない光景もごく普通に見られる。

 はっきり言えば東京にはここまで生きた雰囲気はしない。

 こうやって東京と比較しながら歩いていて、「東京がテーマの音楽にも”東京”という概念のようなものは現れているのか?」と疑問がふつふつとわきあがった。そこで今度は東京をテーマにした曲にスポットライトを当てることにしよう。



東京というテーマの曲

  「東京」というテーマの曲は無数にあるがその中で、自分の思う東京を浮き彫りにした曲を幾つかピックアップする。



cali≠gari東京病

 地方から東京に来た人間が改めて過去を振り返り、自分が東京という街に染まってしまった悲しさを描いた曲。

 数年前に見た憧れも、地元の友も、東京への嫌悪も今はすべて捨て去り、遠い過去でしかない、という悲しさと切なさの漂う東京の闇や澱のようなものがかいまみえるナンバーだ。



BUCK-TICKTOKYO

 東京というテーマをスタイリッシュに描いた作品である。

 ポップで毒のある楽曲はサイバーパンク的な「TOKYO」という記号を描くのにピッタリのナンバーである。まるでアニメ映画の「AKIRA」のようだ。東京オリンピック2020にみられるようなポップでスタイリッシュなイメージはこの曲と近いだろう。



きのこ帝国東京

 きのこ帝国のポップ化とも、これで一皮むけたとも言えるナンバー。

 ただ冷たいだけではなくあらゆる感情を飲み込む大都市としての大きさと懐の深さを感じる「東京」、かのように思える。

 しかし、この感情は「誰かが居るから」という条件付きの東京なので、東京そのものというよりは「あなた」ということに主軸をおいて描かれているのには留意したい。



「東京」という都市と音楽

 まだまだ「東京」と名のつくナンバーはたくさんあるのだが、基本的に東京というのはぬくもりを持って描かれるということはそう多くない。さらに他のアジアの都市圏と比べるとかなり冷たい印象も受ける。その地域特有というような雰囲気には著しく欠けるのは否めないし、清潔すぎて匂いというものに欠ける、それこそ病院のような雰囲気もあるからである。だからこそ、シンガポールなど一部の都市を除いて雑然としているであろうアジアの中でも、東京という街だけはどこか浮いているように思える。

 そんなこの街はこと音楽のテーマになると、大都市圏特有の人間関係の希薄さや冷たさにフォーカスされることが多い

 僕自身はそこまで意識したことがなかったし、東京という街がとても好きなのだが(ディスられるとマジギレするくらいです)、上京した人からは良く思われないところがあるというのは紛れもない事実だろう。

    台湾と比較するとやっぱり活気には欠けるし人の顔も心なしか暗いし・・・。


    結局それでも全てが好きなんだけどね。


 それでもそういう描かれ方をするのは悪いとは思わない。自分のような産まれた時から都内在住の人間ではわからない視点や感情がその歌に乗る、ということは他の人の考え方を知る上で非常に重要だと思う。

 なにせ東京に対する憎しみも怒りも憧れも、自分には懐きようがないからだ。僕はそれを少しだけ羨ましくも思う。


 様々な思いを抱える人々を飲み込み、ときに冷淡に突き放しながらも凛然と存在するその様を僕はいつ眺めても美しいと思うことは変わらない。それだけは紛れもない事実なのだから。



(文:アキオシロートマグル)


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