純音楽としてのロック〜Belle And Sebastianライブ鑑賞記〜
10月5日(木)。私は急遽大阪のBig CatにBelle And Sebastian(スペルがなげーので以下ベルセバとして呼称統一)の来日公演を観にやってきた。
日課のツイッターで来日の情報を見る→そういやぁ、来日するんやったなぁ…→ファッ⁉︎明日やんけ!チケット取らな!の精神で慌ただしく、大阪へ。
開場する前にBig Catが入っているモールBig Step地下のキングコング本店でお買い物。The Electric FlagとCrosby,Stills&Nashのアルバムを格安で購入でき、この時点で気持ちは大満足。
しかし、これからさらなる満足が私を待っているとは思わなかった…。
開場後はわりかしスムーズに場内へ。当日券も出てたし、そこまで人はいないかと思いきやフロアには結構な人数が。しかも、Tシャツ速攻で売り切れかい!買おうと思ってたのに!
女性のお客さんも結構見受けられる。パッと見は男女比が5:5くらいだろうか?メタルライブみたいに黒いバンTの男だらけとか、V系ライブの極端な女性比率とは真逆の健全(?)な男女構成だ。
場内には30分くらい前に入って、しばらくスマホをいじいじしてインターネッツの戦士ごっこをしていたら、気づけばスタート予定時間の5分前。会場は9割方お客さんでいっぱいだ。SOLD OUTとはいかなくても、中々の客入りじゃないか〜と感心していると、暗転。とうとうライブのスタートだ。
ド派手な登場もなく、メンバーはニュートラルにステージに。
1曲目は「Act Of The Apostle」ミドルテンポの穏やかな曲で開幕し、ファンも盛り上がりつつ、「これだよ!これがベルセバだよな〜」という雰囲気をまったりと共有。
そして、2曲目に人気曲の「I'm A Cuckoo」を投入。会場から一際歓声が上がり、Vo.のスチュワートがにっこりと笑みを浮かべながらグッドメロディとグッドシンギングが全体を包んでいく。
次に新曲の「We Were Beautiful」が披露。新作ということもあり、最初の盛り上がりはそこまでだったが、曲が進むうちに観衆の体がゆらゆらと揺れ、良さを感じていくのがわかった。これからのベルセバのライブリストに十分加えられるであろう佳曲だ。
ここでMCがスタート。Vo.のスチュワートはなかなかに饒舌で明るい人のようで、ライブ中にMCの数がかなり多かった。英語が理解出来る人も会場に多かったのか、客席からメンバーに対して声かけもさかんに行われ、冗談がメンバーの口から出れば会場は笑い声で包まれた。
残念ながら、僕の悲しい英語力ではあまり理解できなかったのだが、身振り手振りも交えて話すスチュワートのおかげでMCも十分楽しめた。
その後もライブは終始ピースフル&フレンドリーに進行し、主に旧作からの選曲が多めでライブは進行していく。
ベルセバ節炸裂で、スチュワートの歌に合わせて体を揺らしたくなる「Sukie In The Graveyard」、シンセのイントロが不思議な世界に連れていきどこか80'sのイギリスぽさもある「Stay Loose」などファンがニコニコしながら感慨に浸れる名曲が続き、大大傑作「Tigermilk」からのナンバー「I Don't Love Anyone」が!内省的なアコギのイントロからの「I Don't Love Anyone〜♪」というネガティヴ歌詞に感涙!インキャクソオタクの僕には涙しか出ない素晴らしい曲で大好きなんだ!
個人的なハイライトはここなのだが、この後に会場全体の盛り上がりを迎える…。
ベルセバのライブではお約束がある。観客をステージに上げて一緒に踊り、盛り上がるのだ。「The Boy With The Arab Strap」でスチュワートが下手から多めに観客をステージにあげ、みんなで踊り始めた!勿論会場は待ってましたとばかりに大盛り上がり!男女問わず引き上げられたファンはみな素晴らしい笑顔だった。その後の「The Party Line」はダンスナンバーだったので、みんな飛んだり揺れたりしながら身体で音楽を感じ、ベルセバの多面的な部分も感じられ、新鮮だった。
曲終了後はステージからファンも降り、本編最終曲の「Like Dylan In The Movies」へ。彼らの代表曲であり、締めに相応しいこれ以上ない曲だ。アコースティックの美しい響きとスチュワートの紡ぐ穏やかで優しい歌が、感情の柔らかい部分を癒し撫でてくれる気分になる。バックスクリーンに新幹線から撮った風景だろうか?田園や工業地帯の風景が映しだされる。こういった日本のファンへのサービスもとても嬉しい。
美しく本編は終了したが、ファンはまだ物足りないぞとばかりに拍手の嵐。しばし拍手が続いた後にアンコールの為、またもやニュートラルにメンバー登場。
スローでリズムが気持ち良い「The Blues Are Still Blue」を始めると会場は歓声に包まれる。「おまけだよ」と言ってるかのようなスチュワートの笑顔に嬉しさが募る。
その後メンバーが「あまり長く演奏出来ないんだ。ごめんね(意訳。間違ってたらすまん!)」と言ってた通り、次の「We Are The Sleepyheads」でアンコールは終了。このアップテンポのファニーなコーラスがある曲を締めに持ってくるのは意外だったが、変に寂しくならずに「また、来るよ!」というメッセージを送ってくれたようにも感じたので、納得してステージを見つめることが出来た。その目には涙は…浮かんでなかったが、心は感動でいっぱいだった。
ライブを観た全体の感想としては「楽しいロックミュージックの極み」である。
小賢しいステージギミックや、メンバー同士の激しいテクニックの応酬などないが、とにかく楽しいのだ。それはベルセバが奏でる良質な曲、スチュワートを中心としたメンバーのハートフルなキャラクター、そして何よりファンがベルセバを変な観察眼で斜に構えずに素直に愛している。それが、平和で穏やかな会場の雰囲気を作り上げたと感じた。ファンとメンバーの距離がある程度地位ある中堅バンドとは思えないほど近く、メンバーも大御所オーラを出さず、日本人のファンに優しく上から目線で接していないのは素晴らしいことだと感じた。それが、前述したファンがベルセバを素直に愛している理由に繋がるのかもしれない…。
曲自体も改めてライブで聴くと、いい曲ばかりなのだ…アコースティックで牧歌的で変に攻撃的じゃない。それでいてちゃんと影や弱い部分も誠実に歌う。理想的な曲ばかりだ。ライブ後にまたアルバムを引っ張りだし聞き直してしまったほどだ。それほど普遍的な良さを備えたバンドであることを確認出来たのも収穫だった。
トータルの感想が「楽しかった(小並)」というひっどいライブレポになってしまったが、この文を読んで少しでもベルセバに興味を持った方は是非曲を聴いて頂きたい。レポ中に紹介した曲たちはどれも素晴らしいものばかりだ。そして、次回ベルセバが来日する際には、会場に足を運んで欲しい。それが今回ライブを楽しんだにわかベルセバファンの僕の願いだ。
(文:ジョルノ・ジャズ・卓也)
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