退廃と堕落が織り成す甘美なる明日なきデュエット「JOHNNY THUNDERS & PATTI PALLADIN / COPY CATS」
70年代中期に英国のグラムロックの吐息を受けたストーンズをさらに毒々しく退廃的なオーラで纏った「元祖」パンク・バンドのニューヨーク・ドールズのギタリストとして登場し、その後もイギリスのパンクムーブメントの激流の中をハートブレイカーズ等のバンドで駆け抜けてソロへと転身したジョニー・サンダース。そんな彼が80年代の半ばにハートブレイカーズでもバック・ヴォーカルを務めた元スナッチなるグループにいたパティ・パラディンと共に選曲し、デュエットしたカバーアルバムが本作だ。
二人とも生粋のニューヨーク育ちであって、シャングリラスやスクリーミン・ジェイ・ホーキンスなどのロックンロールへの愛が溢れた通な選曲集となっている。
ジョニー・サンダース、人は彼を「真のリアル・ロックンローラー」と呼んだ。短くも破滅的なその壮絶な人生もさながら、商業的な消耗となりえるような成功とは無縁のアンダーグラウンドのロックスターであったことも要因としてある。
しかし「真のリアル・ロックンローラー」という称号は同時に、人としての一般的な良識や、社会性から最も遠くにある存在=蔑みの対象としての名称と表裏一体のものでもある。彼自身もまた自らを「Bone To Lose」(敗北する為に生まれた)と歌っている。
ロックンロールの魔性に魅せられ、堕落してセックスとドラッグと暴力により破滅する。ジョニー・サンダースは80年代にあっても尚そんな古のロックンロールの幻想譚を生きた男だった。また、彼がオーバードーズで亡くなった時には現場に強盗が入り、音楽機材や金品の類いは全て奪い去られていたという。
辛辣に言えば、それらは全て稚拙な自己陶酔をロマンティシズムと履き違えて破滅した愚か者の成れの果てにしか過ぎない。それが社会的にかつ一般的な人としてのモラルに沿った見解と事実だろう。しかし、それが何だと言うのだろうか。真実と事実は一致しないこともある。正しい偽りもあるのだ。
ジョニー・サンダースはそんなロックンローラーだった。調子外れなステップとヨレヨレのギターとなんとも弱っちい歌声、けれども何故か魅力的で眩しい、矛盾が織り成す魔法で存在するようなロックンローラーだったのだ。
パティ・パラディンの止めどなく甘く享楽的な滑らさを持つ歌声がジョニーの矛盾だらけのイビツな魅力を包み込み、底無しに堕ちて行く事を肯定してしまえる魅力を持つ本アルバム。カバー・デュエット・アルバムという特種な作りでありながら曲一つ一つよりもアルバム全体にトータライズな空気感を味わい楽しめる作品である。
またそれらの魅力は先に触れたように二人がニューヨーク育ちであるという共通点とバックボーンとしてあるロックンロール・ミュージックに対する造詣を支える深い愛着が為し得るものでもある。
そんな二人のデュエットは実に享楽的で甘美で破滅的だ、それは一般的な社会からすれば間違いだらけかもしれない、だからと言って何だと言うのだろうか、この胸の奥を締め付ける感情はそんなものでは割りきれない輝きで溢れているのだから……
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