イタリア流プログレの極意
アーティスト:Banco Del Mutuo Soccorso
タイトル:「self title」
イタリア大好き〜♡
ん?何かイタリアと関係あるか良くわからない画像が挿入されたような…まぁ、良いや。今回紹介するのはイタリアのプログレッシブ・ロックバンドであるBanco Del Mutuo Soccorsoだぁ!
Banco Del Mutuo Soccorso(長いバンド名なので以下からバンコと省略する)はイギリスやアメリカがロックシーンの主流だった70年代に同郷のPFMと共にイタリアンロック/プログレの実力を世界に知らしめた、偉大なバンドだ。
拙くはなるとは思うが、バンコのサウンドとプログレの魅力を伝えられるように頑張って書いていきたいと思う。アンチョビ!僕に力を!
今回、紹介するこの1stアルバムではバンコというバンドのサウンドの方向性が如実に現れている。
ロックではあるのだが、イタリアという自分たちの国の土着的なサウンドがしっかりと落とし込まれており、和洋折衷(?)とも表現出来るような仕上がりとなっている。
イタリアはオペラの名産地ということもあり、オペラは勿論のこと、カンツォーネや南部イタリアっぽいクラシックギターをフィーチャーしたフォーキーなサウンドまで…。また、ツインキーボード体制なので鍵盤の迫力ある掛け合いがダイナミクスさとクラシカルさの両方を表現することに成功している。そして、やはり70年代前半の作品ということもあり、なかなかにハードロッキンだ。ここはツェッペリンやサバスといったバンドのファンにもスッと好んでもらえる要素だろう。
少し、曲自体の内容にも触れていこう。
イントロ部にあたる1曲目の「In Volo」は電子音にフルート等の楽器の音が重なり、男性の語りが重なる不思議な作品。ふわふわと只者ならぬ雰囲気をこの時点で漂わせている。
2曲目の「R.I.P.」ではとって変わって、ヘヴィなキラーチューンが披露される。テンションの上がるキーボードに切れ味あるギターが絡みつき、バンドとしての曲が練られていく過程が最高に心地よい。
そして、中盤以降急にその熱い展開は中断!ピアノをバックに朗々とその艶やかでノビのある歌声が場を支配するようになる。
余談ではあるが、私は初めてこの曲を聴いた時にこのパートでひっくり返るほど驚いた。ロックな展開で終わらせずに、まるでオペラの素晴らしい歌い口のようなシーンが終盤に待っていたとは誰が想像できようか!素晴らしい!素晴らしい!素晴らしい!
3曲目の「Passagio」はクラシカルな小作品。ここで前曲の気持ちを落ち着けるような穏やかな作品。
4曲目の「Metamorfosi」は、これがなかなかに厄介(褒め言葉)な曲だ。アップテンポなキーボードのイントロで始まったかと思うと、すぐにソロピアノの長いターンに入ってしまう。しかし、飽きさせない素晴らしい演奏なので、ついつい聴き手はぐいぐい引き込まれてしまう…リスナーはだんだんわかってくる…この後にくる最高の展開を…そして、ドラムやギターがとうとう参加し始めた!心地よい変拍子が曲をとうとう支配する!そしてそのまま強引に引っ張るかのようなラスト。2曲目よりもクセがあり、変拍子が特徴のナンバー。僕が中坊なら「う〜ん!これがプログレかぁ!」とわかりもしないくせに腕組みをして唸りながら聴いていたであろう深い作品だ。
5曲目の「IL Giardino Del Mago」は世界観の構成に腐心した、18分以上の大作である。
怪しげなサウンドが全体を支配して、曲は展開する。
ここまで美しいヴォーカルを披露してきた声もなんだか不可思議な唸りのように感じる…
儚くも怪しいオルガンがサウンドを紡いでいく中…その怪しさが急に炸裂したかのようなギターとドラムの激しい応酬…そして、またダークな音像へ…儚い美とそれを破壊するかのようなヘヴィな歪みを持つギターとビート…黒魔術士と美しい音楽家の魂が同居したかのような不思議で激しい曲だ。
そして締めの曲「Traccia」は壮大なオルガンをフィーチャーした終幕を強く意識したアウトロ曲。展開の壮大さは名残惜しさを聴き手に与える。
70年代のロック自体が激しく進化を続けた時代に、ここまでイタリアという自分たちの国の音楽レガシー大事にした音作りをしていたバンコというバンドの素晴らしさが詰まった傑作アルバムである。
プログレを知らない人。イギリスとアメリカ以外のロックを聴いたことがない人。そんな人にこそ聴いて欲しいイタリアラブ、プログレラブ、な大傑作。
追記:野暮ったいアー写も良いね〜
(文:ジョルノ・ジャズ・卓也)
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