ロックスターではなく、1人の人間として 〜 Linkin Park「One More Light」

3rdアルバム「Minutes to Midnight」から作品毎に大きくその作風を変えてきたLinkin Park。おそらく今作が変化という部分では一番大きかったのではないだろうか。


アグレッシブなバンドサウンドもスクリームも無い。チェスターのヴォーカルもいつになく柔らかで優しい。さらに外部のソングライターの介入もあってか今までの彼らには無かった陽だまりのような暖かい雰囲気がアルバムを包み込んでいる。

その一方、歌われている内容は非常に内省的だ。孤独と迷い、そして自分の抱えている問題が赤裸々に歌われていて、まるで陽だまりが手の届かない遠くにあるように感じられてしまう。

しかしこれが矛盾しているとは思わない。私を含めて誰しも何らかの問題を抱えていて大抵は理想の自分にはなれていない。それはロックスターである彼らであっても同じであり、陽だまりのような暖かさを感じたのは、苦しんでいる自分の内面とは裏腹に”こうありたい”という理想が映し出されていたからなのではないだろうか。


今作はロックスターではなく、一人の人間としてありのままをさらけ出して、聞く人ひとりひとりに寄り添った非常に暖かくパーソナルなアルバムである。それ故、あの悲しい事件以降、このアルバムの持つ意味は大きく変わってしまったのかもしれない。時間が経てば経つほど今までのように純粋な気持ちでこのアルバムを受け止めることはできなくなってくるだろう。


だから今はただ、彼らが、そしてチェスターが寄り添ってくれた暖かさに浸っていたい、そう思う。


(文:Showta@)



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