アメリカンメタルの器用な奴ら
ミュージシャン:Lamb Of God
タイトル:「Sacrament」
00年代以降のヘヴィメタルは、90年代の低迷期に地下で危険なブリードが行われたジャンルの子供達が表舞台で大暴れした時期である。
ニュースクールハードコアや北欧のメロディックデスメタルの影響下により誕生した、いわゆるメタルコアや(以下参照↓)
北欧の変態テクニカルバンドMeshuggahの薫陶と影響下にあるバンドが始めたジャンルのDjent(以下参照↓)
などなど…それまでの鬱憤を晴らすかのように新たな刺激をメタラーにぶつけていった。
そんな中、PanteraやMetallicaの血筋を引く王道本流のアメリカン・ヘヴィメタルの頭目はどうなったのか?
個人的にはTriviumと今回紹介するLamb Of Godがその偉大な王座の挑戦に相応しいバンドだと思っている。
少し前置きが長くなったが次項から本題に触れていきたい。
Lamb Of Godは1999年にデビューを果たした、アメリカ合衆国のバージニア州出身五人組のヘヴィメタルバンドである。南部出身のバンドらしくグルーヴの効いたミドルからやや早めの腹にズシンとくるメタルが信条だ。
Pantera、Slayerの影響やスラッシュメタルにデスメタルといったヘヴィメタル一般教養を備えつつも、そこにハードコアの切れ味を持ち込んで仕上げているのが彼らの大きな特徴だ。
2006年に発表されたこの「Sacrament」ではその彼ららしさが最初の結実を果たしている。詳しく書き連ねていきたい。
まず、アルバムは印象的なメロデス風リフとその後のミドルテンポグルーヴが特徴的な「Walk With Me In Hell」からスタートする。リズムとリフ、ソロでの絶妙なヘヴィメタル具合が悶絶させる。
3曲目の「Redneck」はこれぞPantera直系のグルーヴメタル!といったモッシュ曲だ。このテンポで暴れさせるのはリズム隊の技量がかなり問われる。それを簡単にやってのけるテクニックにも恐れ入る一曲。
6曲目の「Descending」は後続のメタルコアバンドの良いアイデアになったのではないかと思われる。メロディパートとブレイクの入れどころが見事な作品。スタートはアレキシ・ライホのようなガナリデスヴォイスからスタートし、曲に合わせ低音の這うグロウルに切り替えるヴォーカルのランディの技量にも感嘆する。
8曲目の「Forgotten(Lost Angels)」は疾走するギターリフにヴォーカルが勢いよくまくし立てていくSlayerを意識しながらも彼ら流に仕上げた今作のベストといっても良い一曲。バランスが偏らないように丁寧に作り込んで仕上げる器用さがこの一曲に集約されている。
最終曲の「Beating On Death’s Door」は痛快なリフの疾走感と邪悪なビートダウンが両方楽しめる欲張り曲。こういう曲を出すことから、メタルコア枠にもしばしば入れられる彼らだが安易なビートダウンやブレイクに頼らず、独自のグルーヴやハードコアな歌い回しやリフも見せる彼らにそれは失礼ではないかと個人的には思う。
90年代以降の王道を踏まえつつも、00年代マナーや流行からも離れているわけではない。自分たちのスタイルを持つバンドがLamb Of Godである。 現在も現役バリバリ全盛期でライブをこなしているし、チャートアクションも優秀だ(Sacramentは初登場ビルボード8位だし、今まで出したアルバムの通算売り上げは約200万枚)実績と確固たるスタイルの両立が出来る最後の王道かもしれない…。
もしあなたが00年代以降のコア系に蹂躙されたシーンはつまらないと感じる人なら少し昔のアルバムではあるが是非聴いて欲しい。その不満が一気に吹っ飛ぶだろう。それほど痛快なアルバムだ。
(文:ジョルノ・ジャズ・卓也)
0コメント