アオハル・ロックンロール・ノベルス
学生時代にバンドをしていた、あるいは組みたいと思っている方へ。ロックな小説を3冊紹介したい。※画像はイメージです
1.『ロッキン・ホース・バレリーナ』大槻ケンヂ 角川文庫
18歳・夏・バカの三拍子がそろった「これぞロック」な小説。18歳の耕助・ザジ・バンの3ピースバンド「野原」が全国弾丸ツアーに出かける。出発して早々にエキセントリックなゴスロリ娘、七曲町子を拾ってしまう。果たしてツアーは成功するのか。そんな愛すべきバカで溢れた作品。
所々で流れる80年代を中心としたロックとポップスが物語を彩る。著者であり、ロックバンド筋肉少女帯のフロントマン、大槻ケンヂの趣向が見てとれる。物語のメインはもちろんバンドだが、耕助と町子の心の傷、ミュージシャンとそれを食い物にしているプロデューサー側の思惑も絡まってくる。だけど最後は最高のエンディングで、読んでいてとにかく楽しかった。自分は文庫版で読んだが、表紙と各章の扉絵を浅田弘幸氏が書いており、これがすごくカッコいい。表紙のイラストの少女(七曲町子である)は、筋肉少女帯のアルバム「新人」のジャケットにも登場する。そちらも聞いてみるといいかもしれない。
2.『階段途中のビッグ・ノイズ』越谷オサム 幻冬舎文庫
著者は話題作『陽だまりの彼女』を書いた越谷オサム。上級生の不祥事によって廃部に追い込まれた軽音楽部のたった一人の男子、神山啓人。そこへ軽音楽部に見切りをつけていた幽霊部員、九十九伸太郎が現れて、文化祭での逆転ライブを狙う。
3.『さよならピアノソナタ』杉井光 電撃文庫
ライトノベルが入ってしまうことを許してほしい。この記事のライターの洋楽好きを加速させた、とても思い入れがある作品なのだ。著者はアニメ化もされた「神様のメモ帳」の杉井光である。
音楽を聴くことと機械いじりが趣味の少年・ナオは世界的ピアニストの少女・真冬と出会う。そして偶然にも、真冬がナオのクラスに転校してくる。しかも彼女は学校の一室に籠り、クラシックの曲をエレキギターでずっと弾いているようになっていた…。
典型的なボーイ・ミーツ・ガールものの作品で、恋愛要素がかなり強い(しかもベタ)。だが、作中の音楽がとても素晴らしい。ロックとクラシックの名曲が随所に使われている。今回紹介する作品のうちで、恐らく最も多くの音楽を使っている。物語を通してたくさん音楽を知りたいのであればライトノベルだからとためらわずに、是非手にとってほしい。全4巻(補足する短編集も合わせると5巻)だが、第1巻を読むだけでも十分面白いと思う。
以上である。もちろん他にも面白いロック小説はある。自分が読んだことがあるのは、芦原すなお『青春デンデケデケデケ』、伊藤たかみ『ぎぶそん』、小野寺史宣『ROCKER』など。年齢層が高めの作品なら熊谷達也『オヤジ・エイジ・ロックンロール』などだ。ジャズを題材にした作品であれば村上龍『恋はいつも未知なもの』が素晴らしい。
小説を読み、かつてバンドをしていた方は当時を懐かしみ、これからバンドをしたい方はさらにやる気が出てくれればと思う。
(追記)
この記事のライターも、学生時代にコピーバンドをしていた。ジャンルは洋楽ハードロック。学祭などを含めて数回ライブをしたが、周りが最近の日本のバンドのコピーバンドばかりですごく浮いたし、ごく少数の人にしかウケなかった。「聞く人が好きな音楽」よりも「自分たちが好きな音楽」を最優先にしてバンドをしていたからだ。だがその結果、自分たちの好きなものが存分にやれて満足だった。後悔は全くない。きっとかつて洋楽バンドをしていた人とはこの快楽が分かり合えると思う。これから洋楽バンドをしたい人は、そのあたりを覚悟して、同時に楽しんでほしい。
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