探しもの(「Termination」から10年)

 2017年がもうすぐ終わろうとしている。洋楽好きにとっては今年は期待の若手からベテランまで新譜リリースが相次いだよい年だったと思う。

 では10年前はどうだっただろう。アクモンは1stアルバムを遥かに超える2ndアルバム「フェイバリット・ワースト・ナイトメア」を発表、昨年のフジロックで名演を見せてくれたバトルスが「ミラード」でメジャーデビューし、レディオヘッドは「イン・レインボウズ」を発表した(OKNOTOKと同様にこちらも記念盤を作ってもらいたかったところだ)。


 そして10年前の2007年11月14日、日本ではあのバンドがメジャー初アルバムを発表した。


 9mm Parabellum Bullet 「Termination」


 10代の中頃から後半にかけて、自分はこのアルバムの虜だった。彼らに影響されエレキベースを買い、このアルバムの曲を一人で必死でコピーした(その当時は周りに9mm好きは自分しかいなかった)。

 自分は後追いでこのアルバムを知った。本格的に聞き始めたのは2009年、EP「Cold Edge」の発表直後からだ。(この曲は3rdアルバム「Revolutionary」に収録。)

 それまで自分は彼らについては、様々なフェスというフェスに出演することで名はしってはいたが、曲は「black market blues」しか聞いたことがなく、「不気味で変な音楽をつくる集団」としか思っていなかった。だが、不意につけたMTV japan にこのPVが流れてきた時、あまりのかっこよさに画面に釘付けにされた。

 壊れたように感情的に体を揺らして弾くギタリストとベーシスト、演歌のようなメロディ、語りかけるような声、絶望的で残酷な歌詞。すべてが自分にとって新しかった。

 すぐにCDショップに向かって彼らの音楽を買った。なんでもいいから彼らの曲をもっと聞きたかった。そして手にしたのが「Termination」だった。


 演歌のようなメロディは現在では彼らの強力な個性であり魅力になっているが、この1stアルバムではあまり顕著ではない。急激な爆発で破壊する曲ばかりだ。そして聞けば聞くほど、変テコでクセになるように聞こえてくる。ハードコアをベースとしているようだが、演歌のようでもあり、メタルのようでもあり、エモのようでもあり、結局どれにも似てない。


 PVが存在するアルバム収録曲を聞けばわかってもらえると思う。


アルバムトラック#2「Discommunication」


 アルバムトラック#10 「Termination」


アルバムトラック#11「The World」


 これらの曲は後に彼らの代表曲になったが、アルバムの他の曲もすべて素晴らしい。


 自分は高校生になってから今までは洋楽ばかり聞くようになったが、それでも9mmは特別に聞くバンドの一つだったし、今も変わらない。そして未だに彼らと似た音楽には出会っていない。


 9mmは4thアルバム「Movement」を境に大きく変わった。ボーカル卓郎の歌が格段に上手くなり、演歌的になった。この路線も自分は大歓迎だが、時に「Termination」の頃のようにただ暴れる音が恋しくなるのも事実だ。


 先にのせた曲「Discommunication」のサビの歌詞はこうなっている。

 「私はあなたの探しもの 早くここまで迎えにきてほしいの」


 彼らの音楽を聴いたことがない人、「邦楽ロックなんてみんな同じ」という人、今の彼らしか知らない人。そういう人にぜひ聞いていただきたい。原点にして一つの完成形、そして他の誰にも似てない音楽だいうことを体感してほしい。


 自分がいろんな音楽を聴きつづけているのは、うまく説明できないけど聴いた時に「これだ!」と彼らが感じさせてくれた歓喜を忘れられないからだ。「Termination」は自分が初めて見つけた探しものなのだ。



(文:ジュン)


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