はじめておんぱく(京都音博2017)

 2017年9月23日(土)、くるり主催の今年11回目となる音楽イベント、京都音楽博覧会(通称:音博(おんぱく))に今回はじめて参加した。

 初めての参加で、そもそもどんなライブ会場なのかもわからなかったので、そこから書いていく。会場は京都駅から徒歩でおよそ15分弱のところにある梅小路公園。普通に市街内にある大きな公園だ。中には京都水族館、鉄道博物館もある。短い距離だがチンチン電車にも乗れ、遊具もしっかりあって緑も多い。時折、鉄道博物館の汽車の汽笛が聞こえる。子供ウケは抜群といったかんじだ。

 開場が10:30ということで10時15分頃に会場に到着。入れるのは遅くなるかもと思ったが、10時50分前には入場できた。かなりスムーズだった。そしてとてもよかったのは席だった。ステージ前方はスタンディング用、後方はシートに座って観るスペースになっていた。スタンディングがガラガラでほぼ最前列に行くことができた。後方からでもステージがよく見え、芝生と風が心地よく、ゆったりと音楽が楽しめるので、後方のほうが断然人気があった(開園時に司会から「皆さん京都音博の楽しみかたを知りすぎている」という言葉もあったほどだ)。開演は12:00で終演は19:00。市街にあるためあまり大きな音ではやらずに早く終わるのだ。のんびり音楽が楽しめるピクニックと言える。


 さて、出演順に今年の出演者のレポートにうつろう。


①ディラ・ボン

 インドネシアからやってきた24歳の女性シンガーソングライター。今回が初来日、そして初の海外でのライブだったそうだ。SEはあったが、ほぼアコギ一本と歌だけの非常にシンプルな演奏をみせてくれた。インドネシアらしい、というものがどんなものか自分にはわからないが、独特でやさしい音で、かなりノれた。くるりの名曲「ばらの花」を日本語でインドネシア風にカバーした演奏(と彼女は語った)は盛り上がった。


②トミ・レブレロ

 今回が3度目の京都音博の出演。自分はくるり岸田繁も気に入っている彼のアルバム「新観世音」を持っていることもあり、今回最も見てみたかったアーティストだ。アルゼンチンのブエノスアイレスから。使う楽器は主にバンドネオン。アコーディオンのような楽器だが鍵盤がなく、多数のボタンがある100年以上昔の楽器だ。丘で一人で寝転がって歌を口ずさむように、しっとりと公園の緑に彼の歌と楽器の音色が溶けていくような、そんな穏やかなライブだった。くるりの「ブレーメン」をカバーしたり、なぜか松尾芭蕉をフューチャーした曲をしたり、最後の曲の手前でとなりの水族館のイルカショーの音とかぶってみんなで笑ったり。茶目っ気もよかった。


③京都音博フィルハーモニー管弦楽団

 京都音博のために結成された管弦楽団。少年時代の岸田繁が最初に買った音楽「ホルベルク組曲」の前奏曲を披露し、行進曲(これはタイトルを忘れてしまった・・・)の二曲を演奏してくれた。以降の順番で出演するアーティストを支えるフルオーケストラとして、この順での出演から閉演まで付き合ってくれた。


④アレシャンドリ・アンドレス&ハファエル・マルチニ

 ブラジルのなかでも素晴らしい音楽家を輩出してばかりの州、ミナスからやってきた二人が京都音博にてコラボ。個人的に今年の京都音博のベストアクトに挙げたい。民族音楽というよりはジャズなどに近いような聞きやすいポップスだった。具体的にはアンドレスがアコギとフルートを弾きながら歌うシンガーソングライター。マルチニはオーケストラの作曲、編曲ができるアーティストで、ピアノとコーラスをライブでは披露。京都音博フィルハーモニー管弦楽団を贅沢に使い、ポップさが引き立っていた。これだけの音楽家の曲を今まで聞いたことはなかったことを反省している。


⑤くるり

 われらがくるり。今年の京都音博ではなんと早くも15時からの登場。「おやつの時間やね(岸田繁)」。京都音博フィルハーモニー管弦楽団のチューニングが汽車の汽笛と少し重なって、始まる前から一気に引き込まれた。ブレイクと共に「ジュビリー」からスタート。そこから立て続けに「コンチネンタル」「Remember me」「ロックンロール・ハネムーン」「everybody feels the same」。管弦楽団をバックに、迫力というより、ただひたすらに美しかった。観客も盛り上がるのではなく静かに音楽に聞き入るという風だった。MCを挟んで、JR京都伊勢丹20周年に書き下ろした新曲「特別な日」、もはや定番となった「琥珀色の街、上海蟹の朝」、「京都の大学生」、これも新曲「How Can I Do?」。再びMCを挟んで「ワールズエンドスーパーノヴァ」「ブレーメン」。ワールズエンドスーパーノヴァのオーケストラありのアレンジは鳥肌がたった。最後は「奇跡」を披露。隙が一つもなかった。なによりファンファンが可愛くない瞬間は(音博開園時から閉演までも含めて)本当に一瞬もなかった。トランペットを吹いている時の職人のような雰囲気もよかった。


⑥生歌謡ショー

 11回目の今年の京都音博でくるりが新たな挑戦として取り組んだ演目。出演は順番にアジカンのゴッチ、オリジナル・ラブの田島貴男、UA、布施明、二階堂和美で、それぞれ3曲づつ。斬新なのは事前にそれぞれのアーティストが披露する3曲が発表されていたこと。観客に「待ってました」と思わせるようになっていた。最初にゴッチはトムヨークのようにタコ踊りをしながら歌い、かと思えばリアムギャラガーのように腕を後ろで組んで前かがみで歌い、自由に歌った。続いて田島貴男がいきなりCMで有名なナンバー「ウイスキーが、お好きでしょ」から始め、会場の熱気が一気に上がった。最初の二人が歌謡ショーの雰囲気を完全に作り上げてくれてように自分は感じた。次はUA。羽が生えたかのような変わった衣装での登場に笑いが起きてしまったが、ノリノリで(なぜか空手の正拳突きのような踊りをしていた)歌っていた。そして布施明。先ほど個人的なベストアクトを挙げたが、おそらく今年の京都音博ベストアクトを入場者の多数決で決めたらダントツで優勝するだろう。歌謡曲に疎い自分でも聞いたことがるナンバー「君は薔薇より美しい」「シクラメンのかほり」「My Way」を披露。「信じたこの道を私は行くだけ」というMy Wayからの一節には心から感動した。わりと歌謡ショーはスタンディングエリアの後ろのほうで見ていたが、そこから見たときに、オーケストラとのコラボ、夕暮れの美しさ、照明、力強く美しい声が合わさって神々しいとさえ思った。歌謡ショーのラストは二階堂和美。ビョークかよ、と突っ込まずにはいられないような奇抜な衣装とトリッキーなハイテンションで登場。しかし最後にふさわしく、歌はしっとりと優しく歌ってくれた。「なんで私が布施明さんの後なんですかぁ~!」と登場時に叫んでいたが、彼女が最後でよかった。


 そして、最後の最後はくるりの三人と京都音博フィルハーモニー管弦楽団でいつもの〆。「宿はなし」。


 音楽的にも素晴らしいフェスだったが、ごみの分別やリユース食器の使用、市街の中心ということで終演後も静かに解散と、なにもかもがやさしいフェスだった。


 ぜひ来年にも期待したい。



(文:ジュン)


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