「デケデケデケデケ…」だけじゃない、ノーキー去りし後のHOT&COOLな一枚「THE VENTURES / Theme Form "Shaft"(黒いジャガーのテーマ)」
演っている当人ら以上にファンも既におじさんと言うよりもお爺ちゃんとなってしまったTHE VENTURES。それでもネット全盛の今の時代においても「説明不要」という常套句を用いて説明ができる程にその知名度は他のレジェンド勢とはどこか次元の違う一人歩きをしている程の偉大なアーチストであることに変わりはないだろう。
彼らの功績と言えば「パイプライン」や「キャラバン」そして「ダイアモンドヘッド」の「デケデケデケデケ……」という「あの」ギターで、日本でも一代旋風を巻き起こしたエレキ・ブームの立役者になり、また和製レア・グルーヴの金山であるビート歌謡の発起作「二人の銀座」や「京都慕情」「雨の御堂筋」のような日本人の琴線に触れる作品を日本人歌手に提供したコンポーザーとして活躍した部分も大きい。
バンドのシンプルな形態やもはや空気のように当然的な存在としているが故にこれらの功績は今の音楽ファンにとっては太古の化石話にしか過ぎないのかもしれない。もっとも、一部の熱狂的なガレージロック、サーフロックのマニアにすれば若大将こと加山雄三(ベンチャーズとの共演もある)、テリーこと寺内タケシに並ぶこの年代、世代のスーパーグループとしての輝きは色褪せてはいないのだが。
そんなベンチャーズの看板役者であるノーキー・エドワーズは一時「ギターの神様(もしくは王様)」とまで言われる程に日本では崇められてはいたが、68年には「一度目の」脱退をしている。実際本国での人気は60年代でピークを迎えていたベンチャーズなのだが、日本ではその後も衰えずに来日コンサートなどは人気を博していた。
今や時々来日しては懐メロをバラ蒔いて帰っていくベンチャーズではあるが、コンポーザーとしての面を持つ彼らを象徴するように進歩と創作性のあるアルバムを作っていた時期があった。72年に発表された本作「Theme Form "Shaft"(黒いジャガーのテーマ)」はそんなグループの一面を鋭く切り取り、味わえるアルバムとなっている。何よりもキワどくてカッコイイこのジャケットに痺れてしまうアルバムだ。
ノーキーの後釜として加入したギタリストはモンキーズのスタジオミュージシャンとしての経験もあるジェリー・マギーその人。当時の新世代のロックにも明るいギタリストの加入は既にロートル化していたグループに新風をもたらした。ノーキー在籍時のストレートな魅力も捨てがたいものがあるが、随所に見られる一般的なベンチャーズのイメージにはあまりないであろう粘りやしなやかさといったサウンドアプローチが本作で活きているのはジェリーの加入が大きい。
アルバム冒頭の同名映画の主題曲であるベンチャーズ・バージョンの「Theme Form "Shaft"(黒いジャガーのテーマ)」のタイトなリズムと絡むしなやかな感触がベンチャーズ本来のアンサンブルに濃厚に張り付き、厚みを生んでいる。この曲が実にアルバムを分かりやすくしている。
三曲目の「Thunder Cloud(鳴門)」のロッキン・ミディアムなギターとテンポの格好良さはベンチャーズをグループではなく「バンド」として見直すサウンドだ。
そしてアルバムのハイライトと言えるであろう曲は、なんとコーラス・ボーカルを擁する曲「Deep. Deep. In The Water」である。カントリー調の曲と平行にして安らかに滑るようなハーモニーが実に美しい名曲だ。
またアルバムにはカバー曲もたくさん収録されている。中でもスペンサー・デイヴィス・グループの曲が二曲収録されており、それが「Gimme Some Lovin'」と「I'm A Man」の二曲である。どちらもドライブ感のあるソリッドな仕上がりでカッコイイ。外部の存在を媒体に自身の血と肉する手法もベンチャーズの特色ではないだろうか。何と言っても「日本盤のみに収録」という「The Mercenary(ジャガー(豹)のテーマ)」「Tora Tora Tora」と言うのが実に渋くて嬉しいじゃないか。
69年から正式メンバーとなったオルガンのジョン・ダリルの仕事も多々に活かされており、パーカッションやストリングアレンジにも目配りが十分にされているアルバムだ。当時流行していたダンヒル系のグループのグラス・ルーツのカバー「Two Divided By Love (恋は二人のハーモニー)」等もあり、流行のチェックにも余念がなかったことがうかがえる。
こういったアルバムを埋もれさせてベンチャーズを単なる懐メログループと片付けて聴かないでいるのは勿体ない。夏のビーチでサーフボード片手に聴くのが似合うそんなイメージとは違ったベンチャーズのサウンドをこれを機に堪能してもらえたら嬉しい。
ベンチャーズが俺たち日本に贈ってくれたメロディーはとても美しい。この国もかつてはそんなベンチャーズの書くメロディーのように美しかったのだろう。もしかするとベンチャーズを知ることはこの国の美しさに気づく事なのかもしれない。今こそベンチャーズのそんなメロディーを聴き直す時代なのではなかろうか……
(文:Dammit)
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