幸せな日々 ~ ジムオルーク

 購入するためレジへ持っていく間に自分が思っていたことは「こんなん自分くらいしか買わんのちゃうか・・・」ということだった。

 それは"Happy Days(幸せな日々)"と名付けられたジムオルークのアルバムだった(鳥の絵が緑色で描かれているので、恐らくリイシュー版だと考えられる)。

 彼の作品群のなかでは少しマニアックなアルバムなんじゃないかと思う。


 収録曲

 1.Happy Days 47'33


 以上。

 「プログレバンドか」とツッコミを入れたくなる。(同じようなことをどこかのストーナーロックバンドがやってた気がするが)


 なぜこんなアルバムを買ったのか。それはこのアルバムが彼の在籍していたグループであるガスター・デル・ソルの「アップグレード&アフターライフ」と、彼のソロアルバム「バッドタイミング」の間にリリースされたアルバムだからだ。共にフォーキーな音響系のアルバムだが、内容は異なる。前者は実験性が高くとっつきにくい。後者はミニマルミュージック的な聞きやすいポップな曲ばかり。この二つを繋ぐ作品ではないかと思い、自分は手に取った。


 そして、その期待にこのアルバムは応えてくれた。優しくつま弾かれるアコースティックギターの音色の反復で始まり、徐々に反復するノイズ(ハーディ・ガーディという楽器の音らしい)が覆いつくしていく。ノイズは上書きされるように、生まれては前の反復を飲み込み、新しい反復になる。気づけば再び冒頭のアコースティックギターの音がノイズと共に聞こえてきて、曲はゆっくりと終わる。


 「アップグレード&アフターライフ」にあったノイジーな部分を強化し、ミニマルミュージックへと接近していて、まさに二つのアルバムを合わせたようなアルバムだと感じた。


 これを完成させたことによって、彼は音を反復させて重ねていく手法をノイズから逆にポップなサウンドに適用しようというアイデアが固まったのは間違いないと思う。冒頭のアコースティックギターの音をさらに拡大していくように。


 アイデアは「バッドタイミング」に表され、さらにそのポップな部分を凝縮することによって名盤「ユリイカ」が生まれた。


 つまりこれはただの繋ぎのアルバムではなく、ジムオルークが実験的な音楽家からポップな音楽家に変化するきっかけを作ったアルバムと言えるだろう。

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